三星化学工業に賠償命令、ぼうこうがん訴訟

特定化学物質関係の安全標識例  ミスミHPから
特定化学物質関係の安全標識例  ミスミHPから

 2021/5/12

 

 特化則対象物質は発がん性物質が含有

 

 福井の三星化学工業の労働者達が特化則適用物質のオルト―トルイジン が皮ふから吸収されて、膀胱がんにかかり労災認定されたが、労災保険には痛みや辛さの精神的苦痛の慰謝料は含まれていなく、損害賠償として慰謝料の支払命令判決が2021/4/11でたので紹介します。

 光和精鉱株式会社では、様々な産廃物を処理しています。膀胱がん、大腸がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がんに罹った人がいるので、労働者はガン発症を抱いています。産廃に含有している発がん物質との因果関係を立証しないと労災申請は困難です。

 有機溶剤の含有率が5%超える溶剤は. 有機溶剤中毒予防規則対象になりますが、具体的な対象作業が使用、製造作業と法令では限定されているので、産廃処理は有機溶剤中毒規則の適用となりません。健康診断はするが、労基署へ健康診断結果報告不要なのです。しかし、特定化学物質障害予防規則が適用されます。特化則は有機溶剤防止則のように、こと細かく設備的な具体的な対策は規定されていませんが、予見される健康障碍に対して、暴露軽減対策を講じることを使用者の義務としてます。特化則のほうが有機溶剤則より厳しいのです。

 「自分のからだは自分で護れ」とマスク着用だけを注意するだけでは、安全配慮義務を果たしているとは言えません。なんらかの発生源を封じ込める対策を講じず、また吸引換気設備の性能維持管理を怠らないようないようにする管理態勢が産廃業界は脆弱です。

 

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 2015年05月27日 - 特化則と有機溶剤の違い

 

  

三星化学訴訟 化学物質扱いぼうこうがん会社側に賠償命令 福井地裁判決

【毎日新聞 2021/5/12 東京朝刊】

 三星化学工業(東京都)の福井工場(福井市)で発がん性のある化学物質「オルト―トルイジン」を扱い、がんを発症したのは同社が安全配慮義務に違反したためだとして従業員ら4人が計3630万円の賠償を求めた訴訟の判決で福井地裁(武宮英子裁判長、上杉英司裁判長代読)は11日、同社に計1155万円の賠償を命じた。健康被害を予見できたのに防止措置を怠ったと認定した。

 厚生労働省によると2018年、全国で107事業所の計1168人がこの物質を現在または過去に扱ったとして健康診断を受診した。発症までの潜伏期間が長いため、今後、被害が拡大する可能性がある。

原告は福井県内に住む50~60代の従業員と元従業員。この工場では15年12月まで染料などの原料製造にこの物質を使っていた。4人は1988~97年に働き始め、2015~16年にぼうこうがんを発症。厚労省は16年7月、この物質が付着したゴム手袋を使うなどして長期間、皮膚から吸収したことが主な発症原因とする調査結果を公表した。判決は、同社が01年までに、この物質の有害性が記載された「安全データシート」を入手し、副工場長が目を通していた点を重視。シートには、皮膚が物質にさらされることによる健康被害や発がん可能性が記されており、同社には01年時点で「被害の予見可能性があった」と認定した。その上で、皮膚などに浸透しない作業服の着用や体に付着した場合の洗浄などを従業員に守らせる義務があったのに徹底されなかったと指摘。安全配慮義務違反があったと結論付けた。

 一方で、発症から4~5年が経過後もがんが再発したとは認められないことなどから、賠償額を1人あたり275万~330万円と算定した。訴訟で、同社側は皮膚吸収による発がん性は国や専門家も知らなかったとして、「会社が具体的な対策を講じることは困難だった」と主張していた。同社では原告4人を含む計13人がぼうこうがんを発症し、12人が労災認定を受けた。同社は取材に「判決文を精査しないとコメントできない」としている。

 

<オルト―トルイジン> 

染料などの合成原料に用いられる無色の液体。国際がん研究機関(IARC)は2012年、人に対する発がん性の十分な証拠がある「グループ1」に分類した。体内に取り込むと代謝生成物が尿に蓄積し、ぼうこうがんを発症すると指摘されている。厚生労働省は17年、「特定化学物質」に指定し、従業員の健康診断などを事業者に義務づけた。

 

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2016年11月20日 - 産廃物には特化則の適用されるもの多い。