自分のためだけに仕事をする

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半沢直樹シリーズ3作 週刊ダイヤモンド2010.8〜2011.10連載 

2015/11/1

 

半沢直樹シリーズ3作 ロスジェネの逆襲

 

 池井戸潤さん著の半沢直樹シリーズの『ロスジェネの逆襲』は、メガバンク銀行から東京セントラル証券証券会社へ出向させられた半沢が親会社の専横を見返す展開です。ときは2004年で、IT企業の買収に絡み、バブル入社組の半沢と就職超氷河期入社のプロパー森山という若手がIT企業の買収を阻止する話しである。

 1994年から2004年の就職氷河期に社会人になった若者達をロスト・ジェネレーション=失われた世代と呼んだ。この4作では「やられたら、倍返しだ」と吐くシーンは1箇所しかない。

 就職氷河期はバブルがはじけ、派遣法改悪され正規社員を減らして、非正規社員に置き換えていく。正規社員はサービス労働と過労死。非正規は人間とし扱われず物のような働き方をさせられる。一方で、ホリエモンなどのITバブルで起こります。 

 最近は、2002年度から2010年のゆとり教育を受けた人達が社会人をなっています。「ゆとり世代」の特徴としてストレスに弱いとか主体性がないとか分析する人事コンサルタントがいます。

 

 さて、『ロスジェネの逆襲』で、半沢はラスト近くで部下の森山を諭す。

「仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、人は自分のためだけに仕事をするようになる。自分のためにした仕事は内向きで、身勝手な都合で醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく。組織が腐れば、世の中も腐る。わかるか」。

 そして「戦え、森山」と締めるのです。

 自分の出世のために仕事する経営幹部人間へ抵抗し、不条理と闘う半沢直樹に読者が共感する。小説のラストは、半沢直樹は東京中央銀行へ復帰するところで終わる。そして第4作の『銀翼のイカロス』に続く。

 

 池井戸潤さんは三菱銀行勤務していた経験から銀行員から視点が小説に反映されている。池井戸さんの小説には女性がほとんど登場しない。派遣の女性が銀行では多くなり、社内恋愛からの機密漏洩は起こっていないのでしょう。社内恋愛で機密が漏れる事件。粉飾決算、不正融資、横領事件がなどが内部告発され、陰湿な経営者を糾弾するストリーに快感する。

 銀行員作家では経営破たんした日本振興銀行の江上 剛さんは、金融業界の内幕を骨太く描いていている。 

 光和精鉱には親会社から出向派遣される拝領の管理職のなかに、正論を吐いて抵抗する半沢直樹はいない。

 

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