職業病の膀胱がん

三星化学工場生産設備 同社HPから
三星化学工場生産設備 同社HPから

2016/1/18

 

産廃物は有機溶剤予防則の対象にならないが、特化則対象になる。

 

 戦争法(安保法制改定)が国会で成立した2016.12.19NEWSに埋没して、福井県三星化学でオルト-トルイジンにより膀胱ガンが発生した事件は全国ニュースでは報道されていません。

 2012年には大阪の印刷工場で12―ジクロロプロパンとジクロロメタンを使用していて排気不備で胆管がんが発生した事件は全国的に話題になりました。これを契機に発がん物質の有機溶剤類は、有機溶剤則から特化規の対象物質に変更されました。

 特化則指定物質は、事件が起きてから後追いで指定されることが多いのです。とくに、化学物質の中間体の廃棄物の場合はその性状が不明の場合が多い。

 

過去関連ブログ⇒

 2015年05月27日 - 特化則と有機溶剤の違い

 

  

ぼうこうがん発症工場従業員会見

三星化学工業から危険知らされず

(福井新聞WEB 20151222日午前710分)

 染料や顔料の原料を製造している三星化学工業(東京)の福井工場(福井市白方町)で、従業員ら男性5人が相次いでぼうこうがんを発症した問題で、発症者の2人が21日、福井県庁で記者会見した。関連が疑われている物質「オルト-トルイジン」の危険性について、約4年前まで会社側から全く周知されていなかったことを明らかにし、「もっと早く危険性を知らせて対策を取っていれば、こんなに多く発症することはなかった」と悔しさをにじませた。

 2人は、ともに福井県坂井市在住で現在56歳。通算12年余りにわたり、オルト-トルイジンから作られる粉末状の物質の袋詰めなどに従事している。うち1人が21日に医療機関を通じて福井労働基準監督署に労災申請し、もう1人と別の1人も週内に申請する予定。

 会見では、会社側が2011年ごろにオルト-トルイジンの危険性などが書かれた「安全データシート(SDS)」を工場に置くまで、発がん性とは知らなかったと強調。夏場は半袖で作業し、むき出しの腕に物質が付いて真っ白になったという。乾燥機など作業場所の周辺には集じん機があったが、機能が不十分で周囲に粉が舞い、床も白くなるほどだった。集じん機や換気用ファンの増設を求めたが聞き入れられなかったという。

 2人はそれぞれ、今年8月と11月に、ぼうこうがんと診断されて手術を受けた。「ぼうこうがんは再発しやすいと聞いているので恐怖はある」「若い同僚も今後発症する可能性がある。会社は少しでもリスクが減るよう対応し、発症した場合の補償など安心して働ける環境にしてほしい」などと訴えた。

 会見に同席した労働組合「化学一般労連関西地方本部」(大阪)の海老原新・書記長は「会社として安全配慮義務を果たしていたとはいえない状況。1社だけの問題ではなく、他の工場でも労働者が同じような環境に置かれている可能性はあり、国はしっかり調査して規制を強化すべきだ」と述べた。

 

 一方、三星化学工業は、現時点で労災申請の準備を進めていない発症者2人にも申請するよう伝えたという。本社総務部の担当者はこれまでも、工場側に作業中の防じんマスクや手袋の着用を徹底するよう指導していたと説明した上で、「国の調査に全面的に協力し、真摯(しんし)に対応する」と述べた。