労災法定外障害補償/特別餞別金の沿革

1973年の労災障害の特別せん別金 当時の世間水準は低かった。
1973年の労災障害の特別せん別金 当時の世間水準は低かった。
 2021/4/16

命の値段に格差はない。

 

1.DOWA労災補償準拠

 光和精鉱の創立時(1961年)に同和鉱業から転籍の際、同和鉱業並み労働条件を約束され、賃金、退職金、労災補償、社宅料金など同和鉱業に準拠して1976年頃まで改定されていました。同和から転籍者が減るに従い、ジワジワと賃金、退職金に格差がついていきました。ですが、労災補償だけはDOWAと同じ内容です。

 同和鉱業の労災法定外補償は、全日本金属鉱山労働組合連合会 (全鉱)の産別労組と経営者団体日本鉱業協会の三井、住友、三菱、同和の大手で協議して答申書を出し、各社がその答申書どおりに労使協定を締結しています。その内容を子会社、関連会社に波及させています。

 全鉱は、鉄鋼、造船と合流して基幹労連となりますが、鉄鋼や造船とは歴史的経緯の違いがあり、労災補償内容に違いがあります。同じ産別傘下の単組の規模や収益力の差により賃金や賞与は違いはあっても、命に格差をつけないことが産業別組合の基本姿勢です。鉄鋼の場合も下請け関連会社も、労災補償は親会社と同水準がほとんどです。

 

2.職場復帰したときの減額措置改善

 障害等級7級以上の労災法定外補償は、見舞金と違い認定時支給ではなく、退職する時に支給だから「餞別金」と称しています。

  1975年頃までは、一旦職場復帰したら減額でした。職場復帰したが、やはり堪えられず退職せざるときに減額されるのは不合理でした。そこで、職場復帰して9か月を超えて退職するときに減額するように改善されます。

  そして、現在の規定では、扶養有無の区分も廃止され、職場復帰後、明らかに労災後遺症により業務に堪えられず退職した場合は、減額措置は適用されないようになっています。

 しかし、「労使協議の上、支給することがある」として会社による裁量の余地が残される表現となっています。明らかに労災後遺症による退職であるならば、よほどのことがない限り、減額しない労使の信頼関係のうえに協定は成り立っています。

 

3.することがある」と「することもある」の違い

 「支給することがある」とは決まっていてることを慣例としておこなう意味てす。「支給することもある」とすれば、慣例としてはないが、たまにおこなうことになります。「することができる」とすれば、権利として特例的に自己選択によりおこなえるようになります。約束ごとに逃げ道をつくる言葉は日本的な文化なのでしょう。曖昧さは世間の常識と相互の力関係により運用されるものです。 

 今後の改定で、認定時支給に改善されることがを待たれます。 

 

 4.業務上労災障害補償金の変遷

 (1) 1976年(昭和51年)1月30日

労働協約改定

(特別せん別金)

第76条  組合員が業務上負傷し、または疾病にかかり、障害を残し業務に復帰できず、やむを得ず退職する場合は基準法第77条付表に定める障害等級に従い、次の表1に示す特別せん別金を支給する。ただし、業務に復帰した場合は、退職の時に表2に示す金額を支給する。

 

(2) 2007年平成19年1月1日 改訂条文整理 

社員就業規則

第11章 災害補償および扶助

(特別せん別金)

第107条  社員が業務上負傷し、または疾病にかかり、障害を残し業務に復帰できず、やむを得ず退職する場合もしくしは一旦業務に復帰するもその後9か月以内に後遺症状の退職する場合は。基準法第77条付表に定める障害等級に従い、次の表1に示す特別せん別金を支給する。ただし、一旦業務に復帰した後、9か月を超えて退職する場合は、退職の時に表2の金額を支給する。

 1973年の労災障害の特別せん別金 当時の世間水準は低かった。

 

(3) 2015年平成27年9月1日制定 2016年平成28年1月1日整理

光和精鉱㈱災害補償規則

(特別せん別金)

第7条  社員が業務上負傷し、または疾病にかかり、障害を残し業務に復帰できず、やむを得ず退職する場合は労働基準法第77条付表に定める障害等級に従い、次の表1に示す特別せん別金を支給する。また、一旦業務に復帰した後退職した場合は、退職の時に表2の金額を支給する。ただし、その退職が業務上の負傷もしくは疾病の後遺症によるものであることが医師の診断書等により明らかな場合は、労使協議の上、表1に示す金額を支給することがある。

 1973年の労災障害の特別せん別金 当時の世間水準は低かった。